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もうすぐ年の瀬を迎えようとする晩秋の今日は、大小260余の島々が浮かぶ松島湾
の美しさを一望出来るところとして、江戸時代の儒学者 舟山万年が「東に大高森の
壮観、西に扇谷の幽観、南に多聞山の偉観、北に富山の麗観」と称したことから
いわれるようになった「松島四大観」を、紅葉狩りには少し遅いような気もしますが
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松島四大観は、ちょうど松島湾を取り囲むように東側から大高森、富山、扇谷、多聞山
と並んでおり、私の家がこの四つのビューポイントの中間の位置になるため、最初に訪れ
るのは、大高森に行く途中にある「麗観」といわれる富山です。
自宅を出発してから僅か5分少々で富山の入り口にある案内板のところに到着しました。
この案内板から蛇行する山道を車に揺られて行くと間もなく駐車場に到着し、そこからは
うっそうと茂る杉や松の木立のなかをコンクリートの階段を登って行くと頂上が見えてきます。
展望台には、松島湾を見渡すことができる“あずまや”と奥州三観音のひとつといわれる
富山観音堂が建っています。
富山は、四大観のうち一番標高が高いのですが、海からの距離が少し離れているせいか、
黒々とした山々の向こうに見える松島湾は、「麗観」と呼ばれるようにどこかやさしい感じが
するような印象を受けました。
次に向かう大高森は、松島町の隣町である鳴瀬町の宮戸島にあります。
“島”といっても、今は陸続きになっていて、途中「奥松島乗馬クラブ」の前で乗馬の練習を
眺めたりしながら、大体30分ほどで大高森の駐車場に到着しました。
県道沿いにある駐車場から頂上までは、案内板の表示で0.7キロ、約15分ということで、
さっそく、駐車場のすぐ隣にあるコンクリートの階段を登って行くと間もなく、岩肌の山道に
変わり、急な上り坂をひたすら登って行きます。
それでも急な道の割には、気温がそれほど高くもなかったせいか、大した汗もかかずに
15分くらいで見晴らしの良い頂上に着きました。
さすがにこの場所は、四大観一の眺めの良いところだけあって、あたりを360°見渡す
ことができ、松島湾はもとより、遠くは蔵王連邦や牡鹿半島も見ることができます。
この大高森は、松島湾を“箱庭”のように見ることができ、まさに「壮観」という呼び名が
ふさわしいところです。
大高森の次は、今来た道を戻って扇谷に向かうのですが、途中、四大観に勝るとも
劣らない眺めの良い場所があるので、予定を変更して3ケ所ほど廻ってみることにしまた。
大高森の駐車場から松島町に戻って、国道45号線から町道に入り、松島第一小学校の
裏手の方向にある新富山の展望台までは、およそ30分です。
ここの展望台は、すぐ下まで車で行けるのですが、駐車する場所が狭いために先客がある
と車の方向転換をするのが大変です。
ここの展望台は、ほかの場所と違って人家に近いため、松島の町並みと一緒に松島湾を
見渡すことができます。
また、国宝の瑞巌寺は、この町道の先500mくらい行ったところにあります。
新富山から国道45号線に出て、町道パノラマライン沿いの西行戻しの松までは、観光客
で賑わう松島海岸(正式な名称ではありません)附近の道路が混雑していなければおよそ5分
少々ですが、観光シーズンや休日以外でも日中などに通過する場合は、もう少し多くかかり
ます。
西行戻しの松は、平安末期の歌人である西行法師が松島を訪れた折、松の大木の下で
出会った童子と禅問答をして敗れてこの地から去ったという言い伝えやほかにも色々な
伝説が昔からあり、そのようなことから、このあたりの公園一帯を西行戻しの松と呼んで
いるのだそうです。
また、西行戻しの松公園につづく高台の一角には、戦争で亡くなった方々の霊を慰める
ために建立された白衣観音堂(びゃくいかんのんどう)があります。
西行戻しの松から町道パノラマラインを通り、国道45号線をかすめて双観山までは、7分
くらいです。
駐車場のすぐ隣には、食事処の“双観山”もあり、この先にある展望台からは、松島湾と
塩釜港の両方を眺めることができます。
ここからは、再び四大観めぐりに戻り次の目的地である扇谷に向かいます。
扇谷は、双観山から国道45号線をはさんで、すぐ目と鼻の先にあります。
案内板が出ている国道から舗装のされていない山道を登って行くと行き止まりに狭い
駐車場があります。
ここ扇谷は、紅葉の隠れた穴場としても近年マスコミなどで紹介されているところで、
この日は、先客の車が5台停まっていました。
駐車場脇の見事な紅葉に目を奪われながら、モミジやカエデなどの落ち葉がたくさん
敷き詰められた石段を登って行くと、展望台に到着します。
扇谷は、昔、仙台藩主の茶亭があったという頂上から見える入り江の眺めが、ちょうど
扇の形に見えるということから、“扇谷”と呼ばれるようになったそうです。
頂上の“あずまや”が建っているところから少し離れた小高くなっているところには、再建
された達磨堂が建っており、そこの登り口の脇には、瑞巌寺の3人の僧侶の墓所といわ
れる祠があります。
扇谷には、瑞巌寺の僧侶が座禅堂を構えていて、明治の頃に至るまで寺院があったと
されており、そのようなことからもこの扇谷が「幽観」といわれる所以かもしれません。
四大観めぐりの最後は、松島湾の一番南側にある多聞山です。
多聞山へは、国道45号線を走り、途中、塩釜を通って松島湾に沿って南下しながら
行くと、25分ほどで、他の展望台からも見えていた高い三本の煙突が建っている、東北
電力仙台火力発電所の隣りにある多聞山の駐車場に到着です。
駐車場で塩釜港を眺めた後は、道標のとおりに歩いていくとおよそ3分くらいで多聞山の
展望広場に着き、そこからのびる石段を下っていくと毘沙門堂があり、その裏手が多聞山
のポイントです。
ここからの眺めは、馬放水道をはさんで間近に白亜の灯台が建っている地蔵島があり、
その島から、馬放島、桂島と点在する島が連なっており、眺めている間にもそれらの島々
の間を縫うように、遊覧船や遊漁船などが行き交っていました。
この場所から見える松島湾は、外洋に面しているだけあって天気が荒れた日には、太平洋
から打ち寄せる波の様子などから「偉観」と呼ぶにふさわしい光景が思い浮かぶような
ところです。
今回、松島湾のビューポイントといわれている「松島四大観」と3ケ所の展望地を廻って
みましたが、このほかにも「雄島」や「五大堂」、それから月見御殿とよばれている「観瀾亭」
などから眺める松島湾も、これまで見た場所とは違った顔を見せてくれるかも知れません。
皆さんも、松島にお出での節は、是非、皆さんお気に入りの「四大観」を見つけてみては
いかがでしょうか。
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